【英語コンプレックスの研究者パパによる親子伴走記①】英語が苦手な私が敢えて中学生の息子に発音を叩き込んだ理由:「複利運用」を生む親子伴走メソッド

学び・教育

皆様は英語が得意でしょうか?

多くの日本人は、英語に対して多かれ少なかれ苦手意識をお持ちではないかと思います。

かくいう私も、その「典型」です。

私はかつて化学メーカーで研究開発に従事しており、論理的思考を生かした課題解決能力には自信がありました。

しかし、英語という壁だけは、長年どうしても乗り越えることができませんでした。

英語の知識は、学生時代から積み上げてきました。

就職後も、瞬間英作文、オンライン英会話、YouTubeでのシャドーイングやディクテーション……、思い出したように学習を繰り返しましたが、現実は残酷です。

いざ欧州の取引先との会議になれば、相手の話が半分も理解できず、

英語ができる担当者に頼り切り。

自分自身で意思疎通が図れないという、なんとも情けない思いを何度もしてきました。

知識はあるはずなのに、なぜ話せないのか?

なぜ聞き取れないのか?

発音本「英語耳」に出会い、私はようやく気づきました。

「日本語と英語は根本的に音が異なる。自分が発音できない音は、脳が処理できず、聞き取れるはずがない」という当たり前の事実に。

私たちが長年受けてきた、あるいは学校で今でも行われている英語教育。

小学校の授業参観で目の当たりにした、ネイティブの先生が発音し、子どもたちが元気よく「カタカナ英語」で復唱する光景。

息子も、将来私のように苦しむのではないか。

そんな危機感から、私は中学生になった息子に対し、一つの「実験」を試みることにしました。

それは、親が話せなくても、正しい「知識」と「メソッド」があれば、子供が受ける英語教育の成果を最大化できるという仮説の検証です。

今日は、その実践記録と、なぜ中学生の今が英語学習において最適なタイミングなのかをお話しします。

1. なぜ中学生が「英語学習の黄金期」なのか

多くの親御さんは「幼少期の方が耳が良いから有利だ」と考えがちです。

確かに、遊びの中で自然に音を吸収することには大きなメリットがあり、早い時期に英語に慣れ親しむ環境がうまく作れるのであれば、それに越したことはありません。

一方で、私のように、そもそも親が英語に苦手意識を持っている場合、幼少期の子供に英語を教えるのはハードルが高いものです。

しかし、相手が中学生であれば、話は変わります。

むしろ、理解力のついてきた中学生という年齢は、人生で最も効率的な「テコ入れ」が出来る「黄金期」だと考えます。

「複利」が効く教育投資の仕組み

金融の世界には「複利」という強力な武器があります。

投資において、利息が利息を生み、資産が加速度的に増える仕組みです。

複利効果が働くには、元本(元になるお金)を積み上げた上で、長い運用時間が必要となります。

これを教育に応用するとどうなるでしょうか。

  • 複利運用:利息が利息を生み、資産が加速度的に増える仕組み
  • 教育への応用:中学生で「音の基礎(正しい発音)」を元本として積み上げておけば、その後の英語教育期間が運用期間となり、利回りとしてリスニング力・スピーキング力が手に入る。

中学生は、本格的な英語学習をスタートするタイミングです。

この中学生になった早い時期に、英語の「音の基礎(正しい発音)」という「元本」をしっかりと積み上げたとします。

すると、その後の3年間、あるいは高校、大学で学ぶすべての英語授業が、単なる暗記作業ではなく「リスニングとスピーキングの訓練」という、人生に有益な大きな複利効果を生み出すのです。

もし、「正しい発音」という土台(元本)がないまま、カタカナ英語の皮を被った状態で学習を続けてしまったらどうなるか。

長い時間をかけて、どれだけ教科書を読んでも、どれだけ単語を暗記しても、(元本が積み上がっていないため)リスニング力やスピーキング力という名の利息は一向に入ってきません。私のように、将来になって、英語が話せないことに気付き、愕然とすることになるでしょう。

論理的な理解力が育っている

中学生にもなれば、論理的な理解力も育っています。

  • 喉や舌の使い方
  • なぜ音が変化するのか
  • さらには、そもそもなぜ今の時期に音を習得しておくと有利なのか、

これらを咀嚼して説明してあげることで、頭で理解することができます。

頭で理解し、納得できていれば、あとは、効果さえ実感できれば、学習を継続することができるはずです。

2. 英語が話せない私が実践した「伴走メソッド」

「でも、親である自分が話せないのに、どうやって教えるの?」

私の役割は、完璧な発音を教えることではなく、

「音の仕組みを解説する研究員」英語学習に失敗した「反面教師」であり、学習を管理し伴走する「メンター」に徹することでした。

私が息子と行った実践の全容を、ここで公開します。

フェーズ①:発音の理解(10日間)

まず、私が過去に購入した発音の本(「英語耳 発音ができるとリスニングができる」)をベースに、「音の基礎(正しい発音)」を一緒に学習すると共に、「日本語と英語は音が根本的に違う」ことを徹底的に叩き込みました。

特に、ここで協調して伝えたのは、

「知らない音は、カタカナに変換されてしまう。これではいつまで経っても英語は聞き取れないが、今やっておけば、ここから受ける全ての英語教育が、リスニングの訓練になる

という投資対効果の高さです。

発音の学習自体は退屈なものですが、息子は、頭ではその必要性を理解してくれました。

フェーズ②:フォニックスの学習(5日間)

フォニックスはスペルと発音を結びつける一般法則のようなものです。

これから英語を本格的に学習する息子にとって、知っておいて損はないと考え、①の発音の基礎を復習しつつ、フォニックスを一通り学ぶことにしました。

フェーズ①で発音を一通り(頭では)理解した後であれば、フォニックスを一通り確認するのは、それほどの負担ではありませんでした。

ただし、フェーズ①②の両方に言えることですが、短時間で一通り理解しただけですので、この段階では、耳・口には全く定着はしていません。

フェーズ①②は大変退屈です。

ここで耳・口に定着させるまで①②を繰り返すのは得策ではありません。

ここでは最低限にとどめ、実際に、英単語帳の例文で実践しながら、その都度、音を確認して定着を目指すことにしました。

フェーズ③:英単語帳を使った毎日のルーティン

教材は、中学生向けの単語帳を用いましたが、正直、教材自体はなんでも良いと思っています。

英会話教材などで、子供が興味を持つものがあれば、それを使うのが得策だと思います。

うちの息子の場合、そういった教材はなかったので、どのみち英単語は覚えなければいけないのだから、という実益の観点で、英単語帳を選びました。

英単語帳を用いた学習で重要なのは、ただ単語を覚えることではなく、音を分析して理解することです。

各単語には例文がありますので、これを用いて、寝る前に20〜40分学習しました。

1日10〜20単語です。

無理強いはせず、週に3~4日くらいのペースで行いました。

教材には「中学校の英単語1800が1冊でしっかりわかる本」を使用し、以下のプロセスで進めました。

  1. 例文を聞いて、意味を推測する。可能であれば、音を再現してみる。
  2. 親が、発音、音の変化、リズムを解説して、頭で理解してもらう。
  3. 頭で理解できたら、親がまず音を再現し、それを息子が再現する。
  4. 例文を聞き直し、その通りに聞こえるか確認する。

クリアに聞こえるようになるまで2~4を繰り返すのですが、2.で音の変化を頭で理解した上で、3.で自分で再現する、というプロセスを丁寧に行えば、1~2回で十分クリアに聞こえることが分かりました。

効果を最大化するために、2. 3. のプロセスを行う中で、私が試行錯誤しながら辿りついたポイントがいくつかありますので紹介します。

「音が変わる」というロジックを解き明かす

ここが最も重要で、親が伴走する意味が一番大きい部分だと思います。

簡単な例文であっても、複数の単語から成る「文」の中では、確実に音が変化します。

音が変化していることを知らないと、「うまく聞き取れていない気もするけれど、速く話しているからかな。」と勘違いをしてしまいますが、そうではありません。

音自体が変化しているのですが、単語帳や教科書では一切説明されていません。

単語の発音すらまだ慣れていない段階で、音声を聞いて、自分で音の変化にまで気付く子がどれくらいいるのでしょうか。

この部分こそ、親が理論から説明してあげて、ある程度、口と耳に定着するまでのサポートをすべきです。

例えば、以下のような「音が変化」する代表的な現象を、その都度、徹底的に解説し、頭で理解した上で、口と耳で確認することを日々繰り返しました。

  • リンキング(結合): 単語と単語がつながり、別の音になる。「Did you」や「Would you」など、なぜそう聞こえるのかを理屈で紐解く。
  • フラップT: water, better, cityなどで起きる、tがdやlに変化する現象。
  • リダクション(脱落): him, herなどのhの脱落や、differentlyやexactlyなどでtの音が飲み込まれる現象。「速く喋っている」のではなく、実際に「消えている」ことを確認。

これらは学校では習いませんが、知っているだけで、劇的に聞こえるようになる魔法のようなものです。

息子も私も「なんとなく聞こえる」から「理解した上で、確かにそう聞こえる。」へと劇的な変化が起きました。

聞こえた通りに発音できるよう研究する

当初は、私も息子も、どうしても日本語的な発音になりがちだったのですが、どのようにすれば英語っぽい発音が再現できるかを考えながら実践しました。

下記に具体的な例を示します。

・初めのうちは、[s]と[θ]の発音を混同してしまい、どうしても日本語の「シ」で発音してしまいがちでした。その都度正しい発音を確認していたところ、比較的早い段階で、正しい発音で再現できるようになってきました。

・母音の区別([ɑ], [æ], [ʌ]など)は日本人には難しいものです。カタカナに当てはめると、どれも「ア」になってしまうので、正しい発音が耳に馴染んでいないと区別ができません。繰り返し、確認して、口で再現して、耳で確認することにより、徐々に区別が出来るようになってくると同時に、リスニング力も着実に向上してきたように思います。[l]と[r]の区別も同様です。

・[l]の発音について、dark Lを「ル」と発音しがちでした。「末尾に来るLは、dark Lであり、実際に「ル」と発音されていない」ことを解説した上で、実際に音を確認することを繰り返しました。

・子音の響かせ方にも注意しました。例えば、私たち親子の場合、[w]の発音が絡むと日本語っぽくなりがちでした。これは、発音の教科書にもある通りですが、口を突き出すようにすることで劇的に英語っぽくなることを実際に体験しました。少しずつですが、英語っぽい子音[w]の響かせ方を理解できるようになってきたように感じます。

・曖昧母音[ə](schwa)をどうしても、はっきりと「ア」と発音してしまうことで英語らしくない発音になりがちでした。そのような場面では、「アクセントの来ない母音が曖昧母音になることが多い」ことを繰り返し解説しつつ、実際に音を繰り返し聞いて、文字通り曖昧な発音しかされていないことを親子で確認しました。

このように、気になったことがあれば、その都度、できるだけ充実に再現できるように試行錯誤するようにしています。少しずつの改善を繰り返すことで、徐々にリスニング力が上がっていくことが実感できています。

英語の「リズム」を理解し、語順通りにイメージで理解する。

正しい発音を重視して進めていたのですが、英単語を100語くらい進めた段階で、音は聞き取れているのに、例文の意味を”後から”考えている(=和訳している)ケースがあることに気付きました。

英語と日本語は語順が根本的に異なります。

そのため、よほど短い文でもない限り、一つ一つ和訳していたのでは意味の理解が追いつくはずがありません。

和訳するのではなく、「聞いた瞬間に意味をイメージし、語順の通りに理解できないと、英語の聞き取りはできない」ことを説明し、頭の中で、意味をイメージしながら聞き取るように意識を変えていきました。

同時に、英語にはリズムがあることも説明しました。

英語の文では、意味のある単語(いわゆる「機能語」)と、それほど意味がない単語があります。

意味のある単語は強くはっきりと発音されますが、それほど意味がない単語は、意味のある単語(機能後)の間に、弱く・短く押し込められるような形で発音されます。

このように、そもそもはっきり発音されていない単語が多い以上、「語順通りにイメージしながら理解しよう」と伝えるだけでは無理があります。はっきりと発音される意味のある単語を中心に、イメージで理解していくのが正しいはずです。

「そもそも全部の単語を同じようには発音されていない以上、ネイティブであっても、全ての単語を完璧に聞き取ることは不可能なはず。一言一句を完璧に聞き取るのではなく、ある程度の意味のある塊(チャンク)として捉えて理解している」ことも、この時点で解説しました。

時々、発音記号を確認する

始めのうちは、発音記号をネットで調べながら、どの発音なのかを確認・復習しながら進めました。

特に、(上述した)[ɑ]、[ʌ]、[ə]の区別などは、私も一度聞いただけでは確信が持てないケースが多く、発音記号を確認し、例文を聞き直すことで、「うん、確かにこの発音だね」と親子で確認しながら親子で耳と口を鍛えていきました。

尚、初めの頃は、フォニックスに従っているかどうかも逐一確認するようにしていましたが、基本的な頻出単語の中には、フォニックスに従わないものが非常に多いことに気付きました。

調べてみると、歴史的に音が変化したものが多いとのこと。

フォニックスは理解しておくに越したことはありませんが、基本単語であれば、音と意味(イメージ)をそのまま覚えてしまう方が早いとも言えます。

一旦、フォニックスに拘る学習は止めることにして、時々、確認する程度に止めています。

一方で、スペルから音が予測できるフォニックスの知識は中級以上の英単語学習でとても役に立ちそうに思います。

フィードバックを繰り返す

「今回はここが聞き取れていたね」

「今回はここが正確に発音できていたね」

といったフィードバックを繰り返し行いました。

これは、私が何十年もかけて出来なかったことを、数週間くらいの単位でどんどん出来るようになっていく息子を見て、単純に嬉しくて思わず言ってしまうという側面もあるのですが、

どこが上達したかを言語化してあげると、本人も上達を具体的に実感でき、モチベーションの向上に繋がると思っています。

完璧である必要はない

勘違いしないでいただきたいのは、私自身も完璧な発音を教えているわけではない、ということです。私の発音も、あくまで「私のベスト」に過ぎません。その前提で、「お父さんもここを頑張っているから、一緒に確認しよう」というスタンスで進めました。

大切なのは、以下のサイクルを回すことです。

  1. 例文を聞いて、意味を推測する。可能であれば、音を再現してみる。
  2. 親が、発音、音の変化、リズムを解説して、頭で理解してもらう。
  3. 頭で理解できたら、親がまず音を再現し、それを息子が再現する。
  4. 例文を聞き直し、その通りに聞こえるか確認する。

長年英語に苦しめられてきた社会人であれば、自分は話せないけど知識だけは少しあるよ、という人も多いことでしょう。

それで十分です。一緒に学習しながら、伴走することができます。

3. 嬉しい二次的効果:親もリスニング力向上

ここまでで、約2ヶ月間、英単語400語程度の例文学習を進めてきた中で、面白い変化がありました。

息子はもちろんのこと、私自身のリスニング力が圧倒的に向上したのです。

過去に何度も挫折した私が、息子との伴走学習を丁寧に進めることで、結果として自分自身の「耳」も開発されました。

長年、英語に苦しんできた私ですが、中学生レベルの単語から成る例文であれば、1~2回聞けばほぼ聞き取れます。ニュースやYoutubeの動画などになると、一度で全体の意味を捉えるのはまだ困難ですが、断片的には意味が分かるようになっており、その効果の高さに衝撃を受けています。

知識はあるが聞き取れない、話せないという私のようなタイプにとって、この学習スタイルは「親子での二重の利回り」を生む最高の資産運用でもありました。

息子との伴走がいつまで続けられるかは分かりませんが、個人的な学習は継続していくつもりです。長い間、英語コンプレックスに囚われていた私の想いも、成仏させることが出来るかもしれません。

4. 親が「知識」で伴走する効果

中学生の息子が、ある日、例文を1回聞いただけで意味を理解し、自分の口でも再現できている姿を見た時、この「実験」・「教育投資」は成功したと確信しました。

彼にとって、英語はもはや「試験のための暗記科目」ではありません。

「自分の思考を音としてアウトプットし、外部の情報を受け取るためのツール」に変わる、

将来のそんな一歩を踏み出しているように思います。

英語学習は、単なる勉強ではありません。

今の私は、正しい知識をインストールし、論理的にアプローチすれば、たとえ親が話せなくても、子どもに一生モノの武器を授けることができることを確信しています。

「一見、退屈にも思えるこのような学習が続くのか?」

そのように思われた方もいるかもしれませんが、心配は無用です。

初見では聞き取れなかった例文が、音の変化を理解して、自分で再現するというプロセスを経るだけで、劇的に聞き取れるようになるのです。

この嬉しい体験を常に経験できるのですから、やってみるとそれなりに楽しいものです。

私の息子も、はじめのうちは、嫌々やっている様子でしたが、

徐々に、何と言っているかを当てる「ゲーム感覚」で楽しめるようになっています。

5. 最後に:話せない親こそ、英語の壁を壊す伴走を!

もしあなたが、私のように英語にコンプレックスを抱えながらも、知識だけは蓄えてきた大人なら、ぜひお子様と一緒に伴走を始めてみてください。

それは親子の絆を深める時間であると同時に、お子様の将来の選択肢を広げる、何物にも代えがたい資産運用となるはずです。(そして、ご自身の英語コンプレックスも成仏できるよう、一緒に頑張りましょう!)

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