【実録】「株主優待目的」の買い判断は危険。プロでも陥る心理バイアスと、その克服法

株主優待

私は20年以上、株式投資を続けてきました。投資信託、米国ETF、国内外債券、そして日本個別株と幅広く資産運用を行っています。

特に日本個別株を中心とした「高配当株投資」は、現在の資産運用の主力です。また、保有銘柄の中には株主優待銘柄も含まれています。カタログギフトを選び、家族で「どれにしようか」と迷う時間は、投資のささやかな楽しみの一つでした。配当金と優待を合算した「実質利回り」の高さは、多くの個人投資家を惹きつける魔力があります。

しかし、「優待目当て」という動機だけで投資判断を行うことには、投資家が陥りやすい大きな「心理バイアス」が潜んでいます。

今回は、私がかつて犯した失敗談をケーススタディとして共有します。プロの視点から自身の判断を振り返り、どのような思考プロセスが誤っていたのか、そしてどうすれば冷静な投資判断が可能になるのかを解説します。

1. ベルメゾンに魅せられた「判断の歪み」

ターゲットは「千趣会」でした。カタログ通信販売「ベルメゾン」の優待がもらえる銘柄です。

100株で年間2,000円、500株で8,000円、1,000株で10,000円。長期保有での上乗せもあり、妻が普段から利用していたこともあって、以前からずっと注目していました。

業績が悪化し、株価は下落トレンドが続いていましたが、2025年末頃には220円台まで下がっていました。「500株(約11万円)で年間8,000円の優待なら、利回りは7%超えか……」

この時、私は「優待の魅力」とその利回りだけを判断材料に、権利確定日直前に購入ボタンを押したのです。

2. 犯してしまった「ナンピン買い」の心理

ここまでであれば、優待目的だけであったとしても、そう悪い判断ではなかったかもしれません。

物語はここから暗転します。

2月中旬、株価は50円以上の急落を見せました。ここで私は、投資家として一番やってはいけないことをしてしまいます。SBI証券のニュースをサラッと確認しただけで、「特に悪材料はないな」と勝手に都合よく解釈し、なんと500株の「ナンピン買い(買い増し)」を行ったのです。

「合計1,000株になれば優待も増えるし、四季報を見れば赤字も縮小傾向にある。そろそろ下落も止まるだろう」という安易な楽観論。今思い返せば、これは自分にとって都合の悪い情報を過小評価し、「そのうち元に戻るだろう」と思い込んでしまう「正常性バイアス(※)」でした。

※正常性バイアス:予期せぬ事態が起きても、「自分は大丈夫」「まだ大丈夫」と事態を過小評価してしまう心理のこと。

実はその数日前の2月13日、致命的なニュースが出ていたのです。「株主優待の廃止」。これが株価急落の正体でした。

3. 失敗を最小化するために必要な「第三者の視点」

今回の失敗を経て、私は自身の投資判断プロセスを再構築しました。特に重要だと確信しているのが、「もし第三者にアドバイスするとしたら?」と考える手法です。

人間は自分自身の問題に対しては、感情や先入観が邪魔をして合理的な判断ができなくなります。しかし、他人の課題に対しては、驚くほど冷静で論理的な分析ができるものです。

もし、この状況をクライアントや友人から相談されたらどう答えるか?

「500株購入で優待利回り7%を超えると考えたので、まずは打診買いをした」という状況に対し、株価が下落したからといって、優待利回りが大きく低下(*)する銘柄を買い増す理由など、本来見当たりません。
*500株と比較して、1,000株では優待利回りが大きく下がります。

第三者の視点に立つことで、「買い増す理由がない」という論理的な答えが瞬時に出たはずです。「自分事」を「他人事」としてフレームをずらすだけで、感情による歪みを排除できるのです。

4. 今回の失敗から得た「3つの教訓」

今回の経験から、投資判断において重要視すべき教訓をまとめました。

  • 「なぜ下がっているのか」の事実確認を徹底する

下落原因を確認せず、利回りの数字だけに飛びつくのは投資ではなく投機です。Google検索や企業のIR情報を見る、そんな当たり前の情報収集さえあれば、ナンピン買いという過ちは未未然に防げました。

  • 前提が崩れたら、即座に見切りをつける

高配当株投資などは「減配しない」「優待がある」といった前提で購入します。赤字転落や優待廃止など、購入理由が崩れた時点で、一度冷静に撤退を検討する勇気が必要です。

  • 下落トレンドには逆らわない

業績が悪い銘柄の底は見えません。「拾えばお買い得」と思いがちですが、それは「落ちるナイフを掴む」行為です。業績回復やトレンド転換の兆しを確認してからエントリーしても、決して遅くはありません。

最後に

優待は、あくまで企業からの「おまけ」です。配当金とは異なり、いつでも廃止できる権利であることを肝に銘じましょう。特に、優待の人気だけで株価が維持されている銘柄は要注意です。優待が廃止された瞬間、株価の大きな下落という「二重の損失」を被ることになります。

今回の失敗が、皆さんの資産運用における「反面教師」となれば幸いです。株主優待を楽しみつつも、企業の業績という「本質」を見失わないように、これからも冷静に運用していきましょう。

投資は自己責任。だからこそ、自分の頭で考え、客観的事実を積み重ねる姿勢こそが最大の防衛策なのです。

※該当銘柄は全て売却し、損切りを完了しています。

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